雑節 解説文


半夏生(はんげしょう)
2023年 【太陽黄経が100度の日】

雑節のなかで七十二候が採用されている唯一の例で、夏至の末候「半夏生ず」がそのまま半夏生となりました。
半夏生とは半夏という植物が生えるという意味ですが、半夏とは「からすびしゃく」と呼ばれるものです。
「からすびゃくし」は「ほそぐみ」という漢方薬の原料となります。
ところが、これとは別に「はんげしょう」という名の植物があるからややこしい。
「はんげしょう」は「どくだみ」の種類で、半夏生の頃にハート形の葉が白く変色する面白い習性を持っています。
半夏生は太陽が黄経の100度に達したときとされていますが、これは夏至からほぼ10日後にあたっています。
この頃は梅雨の最中で、湿度も高く大変むし暑くなり、カビが生えたり、伝染病が流行しやすい。
そこで、飲水や食物に注意をうながすためにさまざまな諺やタブーが生まれました。
たとえば「半夏生には天から毒の雨が降るから、井戸に蓋をしろ」とか、「半夏生の水は妊産婦に飲ませてはいけない」などといわれます。
また、田植の終期とされ、「半夏半作」といって、これ以降の田植は収穫がはなはだしく減少するから、「どんなことがあっても半夏生までに田植を終えなければならない」とされました。
近年は、田植の時期がずっと早くなったし、食品の衛生管理もゆきとどいてきたので、半夏生といってもあまり関心を持たれなくなりました。
しかし、本格的な暑さの到来に先立って、この時期の健康に注意せよという意味で残しておきたい雑節です。